張騫の制作方法
タイトルがユニークである。
「電柱の残骸」
「鉄道標識」
「巻かれた電線」
「破れたビニール袋」
「キッチンと配管とレンガ」
「キノコ」
「白と黄色のラッパ」
「モーターボート」
……
タイトルに使われていることばそのものがユニークなのではなく、出来上がった作品との関係が面白いのである。
たとえば「モーターボート」。
「これ、どこにモーターボートがあるの?」
「あ、これがモーターボートです」
と言って指さしたのが、なんだかわからない黒いかたまり。そのかたまりに黄色い点線が這っている。
???
「よくわからない」
「これが写真です」
と言って見せてくれたのだが、モーターボートはモーターボートなんだけど、ブルーシートで覆ってあるので、船の形には見えない。ブルーシートには紐がかかっている。
「これじゃわかんないわけだ」
もともとの形がわからないうえに、抽象化した描き方になっているので、訳が分からないのだが、魅力的な画面ができあがっている。もともと何を描いているのかは、本人が分かるだけでよくて、鑑賞者は純粋に「絵画」として観ればいいのである。
モチーフは何でもいいのかというとそうではなくて、本人なりのこだわりがあるようだ。モチーフはそれを選んだ時点で写真を撮るのだが、同時にその場でスケッチをする。かなりリアルなスケッチである。これを絵にするときは、写真は見ないで、スケッチだけを頼りに画面構成していく。抽象画に限りなく近いのだが、本人は具象だという。まあ、具象か抽象かなどという問題設定が古いんだけどね。具象か抽象かなどという議論をする昭和世代とはもう時代が違うのである。
「それにしてもさ、モチーフの選び方がすごくヘンだよね。どうしてこんなものを選ぶわけ?」
「そこが現代美術ってもんですよ」
と張は胸を張る。
芸大の授業はもうないので、毎日ギャラリーに来る予定だ。時間はわからないけど。
今週はかなり寒くなるようだが、寒い中を見に来る価値はありますよ。
張 騫(チョウ・ケン)展
3月3日(月)ー8日(土)
昨日また本を買ってしまった。
金井美恵子 『目白雑録 Ⅰ」(中公文庫)
同 「目白雑録 Ⅱ」(中公文庫)
読むスピードが落ちてきたので、本が溜まっていく…
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