ことばを探す
2月18日(火)
毎週ギャラリーに顔を見せてくれるKさんが来る。かれは美術愛好家でギャラリーをまわっている。毎週来てくれるので、案内状は出していない。長居はしないでぐるっと見渡して黙って帰るのがいつものパターンなのだが、今日は案内状について質問してきた。
「ときどき案内状にいろんなことばを載せてますけど、よく本読むんですか?」
「まあ、読みますよ」
「今回のことばもいいですねえ」
「気に入ったことばを見つけるとメモしておくんですよ」
今回のことばというのは「風景あるいは絵画」の案内状に載せた富岡多恵子の『植物祭』から採った
それは思い出ではない。
事実だったことは
まだ思い出にならない。
である。
「富岡多恵子って、今は知ってる人あまりいないでしょうね」
「そうかもしれません」
これは、今回の展覧会のタイトルに合わせて選んだフレーズなのである。
どこをどういう風に「合わせた」のか、それは自分で考えてみてね。
事実→思い出
風景→絵画
これがヒント。
「吉岡さんが選ぶことば、楽しみにしてるんですよ」
「え、そうなの?じゃあ、がんばって載せなくちゃ」
これを楽しみにしてる人が居るなんて、うれしい限りである。
4月のアートカクテルのDMができているので、それを渡した。丸山薫の詩の一節を載せてある。
鉛筆が買えなくなっても
指で書くから いい
ノートブックがなくても
空に書くから いい
「どうですか?」
「イケてますね」
2月20日(木)
「こんにちは、リュウです」
と言って、若い女の子が入ってきた。
「このあいだシェリーさんと一緒に来たリュウです」
ああ、そうか思い出した。展覧会をやりたいと言って、唐さんと一緒に来た子だ。
二人展をやりたいと言っていた。今日はもう一人の子、スウさんも来た。
唐さんは、みんなにシェリーと呼ばれている。
「シェリーは寮の先生なんですよ」
「え?寮?」
唐さんは留学生の寮の寮母さんとかなんだろうか?ご飯作ったりしてて。
「あ、間違いました、塾です、塾の先生でした」
塾というのは、海外からの学生が、日本語を学ぶ予備校のことである。
シェリーはそこで教えているのだ。バイトだね。そういえば、芸大の博士を出るわけだから、就職どうするんだろう?4月までにはなんとかしないといけないんじゃないかな…
二人は、リュウ・チセンとスウ・シネイ。女子美の大学院に留学している。二人の名前は漢字表記でなくカタカナにする。パソコンに入っていない漢字があるから、それなら全部カタカナにしようと決める。リュウさんはもうすぐ2年生、スウさんは4月から入学。作品もしっかりしている。
今年の6月が空いていたので、そこに二人展を入れた。
「展示台はありますか?」
「うちはないのよ。だから展示台使うときは自分で用意してね」
「大学から借りられると思います」
「ここまで階段で運ぶのが大変だから、力のある友達に頼んだほうがいいよ」
「女子美は女しかいないんですよ」
「じゃあ、力のある女子を連れてこよう」
「リュウさんて、今何歳?」
「もう27なんです…」
若いって、こっちまで元気になるねえ。
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