ランダ・ムダー
ジョン・バージャーの『画家たちの「肖像」』読み終わる。取り上げられている作家74人の最後がランダ・ムダーである。パレスチナの作家である。
バージャーがこの評論を書いた時、ムダーは29歳だった。彼女は1983年生まれなので、2012年に書かれた文章である。バージャーが亡くなる5年前だ。現在は42歳のはずだが、彼女は生きているのだろうか?
上條陽子は何度もガザを訪れているが、行くたびに、自分は何も悪いことをしていないのに犯罪者になったような気持ちになると言った。ガザ地区の周囲には高い塀が張り巡らされていて、監視されている。
「ガザ、この世界最大の監獄は殺戮の場と化しつつある。(ガザ地区の)「地区」という言葉は血にまみれている。六五年前に「ゲットー」という言葉がそうだったように。
昼も夜も、爆弾、砲弾、放射性爆弾GBU三九、機関銃の弾丸が、イスラエル国防軍によって、空から、海から、地上から、一五〇万人の民間人に向かって発射されている。
……
虐殺のあとは、じきに疫病が蔓延するだろう。住居のほとんどには水も電気もなく、病院には医者もおらず、薬も発電機もない。虐殺は封鎖と攻囲に続いて行われる。
世界中で抗議の声がますます高まっている。だが、世界のマスコミを従え核兵器の保有を誇る豊かな者たちの政府は、国防軍の所業については見て見ぬふりをすることをイスラエルに請け合っている。」
ガザは現在までずっとこういう状況だったわけだ。こういう中でアーティストたちが作品を作り続けていることを、わたしたちはどう受け止めるべきだろうか。
「私は数カ月前ラマッラに戻り、使われなくなった地下駐車場を訪れた。パレスチナの視覚芸術家たちの小さなグループがここを占拠して作業場にしていて、その中にランダ・ムダーという名の彫刻家がいる。私は彼女が構想し制作した《人形芝居》という題のインスタレーションを見ている。
この作品を構成するのは大きさが三メートル×二メートルほどのレリーフで、それが壁のように直立している。その前の床には、人間の全身像が三体ある。」
「彼らの体は三本の横棒からぶら下がった糸につながっていて、その横棒はさらに天井からぶら下がっている。彼らは操り人形なのだ。横棒は、この場にいない、または目に見えない人形遣いが操るための棒だ。」
「目に見えない人形遣いが操る糸につながれた、実体を持ちおののく三体の人物像は、地面にまっさかさまに放り出される。何度も何度も、彼らの頭が割れるまで。彼らの手、胴、顔は苦痛にゆがんでいる。終わることのない苦痛だ。彼らの足を見ればわかる。何度も。何度も。」
「レリーフの無力な見物人たちと地面にだらりと横たわる犠牲者たちの間を歩くこともできるだろう。だが、私はそうはしない。この作品には、私がこれまでほかのどの作品にも見たことのない力がある。これは、自らが立つその大地を要求している。」
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