もの派
1月26日(金)
倉重光則と勝又豊子が来てしばらくおしゃべりをしていく。小野田くんの話になる。倉重が評価する作家で、今スイスで展覧会をやっているらしい。二人が、アトリエ・Kに行くというのを見送ってしばらくすると、小野田くんがギャラリーに入って来る。
「箱舟展でご一緒させていただいた小野田です」
わたしは初めて会う。小野田賢三、ご存じのない方も多いと思う。コンセプチュアル系の作品を作っているが、海外での発表が多いので、国内ではなかなか見られない。
「今バーゼルで展覧会やってるんじゃないですか?」
「そうなんですけど、いろいろあって向こうには行けなかったんです」
彼と一緒に若い女の子がついてきている。中国人の留学生で陳さん。芸大でもの派について調べているという。日本語もなんとか会話できる。
「李禹煥についてはだいたい調べ終わって、書きました」
「菅木志雄は?」
「スガキシオ?」
「そう」
「ああ、わかります」
スガキシオと聞いてもわからないが、漢字で書くとすぐわかるのだった。
もの派は、彼女の生まれる前が全盛期だったわけだ。それを今研究しているというのはエラいと言わねばならない。
三人で原口典之や倉重の話をする。倉重は作品によってはもの派なんだけど、本人は認めない。
「70年代とか、80年代って、ギャラリーとかどんな雰囲気だったんですか?」
もの派の作品だけを見てもわからないことがいっぱいあるのだ。
「当時はインスタレーションばっかりでさ、絵画で個展とかやると、何、絵なんか描いてんの?ってバカにされたよ」
そういう時代だった。
「アルテ・ポーヴェラとかもいっしょに調べた方がいいかもね」
せっかくなので、この間作ったわたしのミニカタログをあげる。倉重とかもテキスト書いているから。わたしのテーピングの作品も実はもの派なんだよ、と説明する。
「もの派にすごく影響うけててさ、おれ、隠れもの派なんだよ。この作品はさ、遠くから見ると絵画ふうのイメージだけど、近づくとテープのモノとしての存在が前に出てくる」
「あああ!なるほど、そうですねえ!わかります」
わたしのテーピングのもの派的なところをすぐに理解してくれた人は初めてだ。
カタログをぱらぱらめくっていた陳さんは
「あ!この人知ってます!」
と声をあげた。霜田誠二が書いたテキストのページだった。
「パフォーマンスの人ですよね?私はワークショップを受けたことあります」
さすが霜田誠二である。海外では有名人なのである。
それにしても今週は寒い。明日の日曜日は久々の休みだから、マッサージを受けて思い切りのんびりしよう。
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