久坂葉子の小説
11月4日(土)
尾崎紅葉の『多情多恨』がもうすぐ読み終わりそうなので、主人公の男の煮え切らない態度にいらいらしていたこともあって、今日で終わりにしようと読み始めたら、ミナトさんが、「これ読んだ?」と言って文芸春秋の9月号を差し出したので、見てみると芥川賞発表号で、市川沙央の「ハンチバック」が載っていた。本屋さんには単行本が並んでいて、買おうかどうか考えていたところだったので、ちょうどいい、これで読めばいいやと借りることにした。内容は重いのだが、なぜか爽やかでもある。
「これもあるけど」と言いながら、ミナトさんは中央公論の9月号を見せてくれる。「追悼 富岡多恵子」という記事で『「ここにいていいよ」と言われて五十五年 僕にとっては最高の人だった』と題して菅木志雄のインタビュー。「わたし富岡多恵子好きなのよ」「おれも好き」水曜日にミナトさんの作品の撮影をしてくれる写真家の山本糾(やまもとただす)さんも好きなので、差し上げることにしているそうだ。「だから早く読んで」と言われてすぐに読み始める。富岡多恵子の晩年のことが書いてあって面白かった。
11月5日(日)
昨日読めなかった『多情多恨』を読み終わる。
久坂葉子(くさかようこ)の『幾度目かの最期』を開く。久坂葉子という名前は初めて見る。教文館で本棚を見ていて目についたので買ってみたのだ。ちょっと読んで衝撃を受ける。どの行にも神経が走っていて切迫している。尾崎翠を読んだ時と同じ衝撃だ。
17歳で小説を書き始め、19歳のときに書いた「落ちてゆく世界」(改題して「ドミノのお告げ」)が芥川賞候補になり注目される。21歳のときに「幾度目かの最期」を書き、その原稿を編集者に渡して、その日のうちに鉄道自殺してしまう。
小説もそうだが、その人生も壮絶である。
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