マヤコフスキー
2015年にベオグラードで開催された「2+2」展にミラン・トゥーツォヴィッチは何点もの油絵の大作を並べたが、開催初日の朝に、さらに3点の作品を運び込んだ。
「今完成したんだよ」
と言いながら展示作業を始めた。それは平面の絵画ではなく、木の箱の両面に肖像画を描いたものだった。詩人のマヤコフスキーは判ったが、あとの二人は誰だかわからなかった。後で聞いたのだが、オシップ・ブリークと妻のリーリャ・ブリークとのことだったが、どんな人だか全くわからなかった。ただ、この3人は「三角関係」だったということを教えてもらった。
水野忠夫の『ロシア・アヴァンギャルド』を読んでいたら、オシップ・ブリークが出てきたので、ああ、そういう関係だったのかということがわかった。マヤコフスキーは詩人として著名だが、大学は美術大学を出たそうだ。だから絵も描くのである。オシップ・ブリークは大学の同級生で親友だった。ブリークは後に言語学者になる。ロシア・アヴァンギャルドの時代は絵描きから詩人に転向する例がいくつもある。彼ら3人が写っている写真がある。マヤコフスキーがなぜリーリャに惹かれたのか、写真ではわからない。リーリャは鋭い眼光を光らせ、ちょっと怖い顔をしている。ロシア・アヴァンギャルドの「レフ」のメンバーの集合写真にリーリャも写っているので、彼女も文学者だったのだろうなあ。リーリャはロシア語で百合という意味だそうだ。
ミランは様々なところからモチーフを選んでくる。
先日、山崎洋 『山崎洋仕事集』を稲毛のくまざわ書店に注文した。2週間ぐらいかかると思います、と言われたのだが、4日で届いた。分厚い本だからじっくり読まなければならない。ミランのことも書いてある。5月20日に出たばかりだから「セルビアから見たウクライナ戦争」というテキストも入っている。
くまざわ書店でもう一冊本を買った。グレゴリー・ベイトソン 『精神の生態学へ【上】」(岩波文庫)。「上」とあるので、ページを繰ってみたら、全3冊とあったので、ああ、これは3冊揃ったらまとめて買おうと思っていたのだが、なかなか「中」が出ないので我慢できなくて「上」だけ買ってしまったのだ。ベイトソンは面白いよー。
今わたしは猪熊弦一郎 『マチスのみかた』を読んでいるが、猪熊は実際にマチスに会っているので、その文章には説得力がある。
「先生は私が持っていったたくさんの油絵とデッサンをいちいち静かに眺めながら批評をして下さいました。私のデッサンの中にピカソに似たデッサンがありましたが、それをご覧になって、「この仕事は賛成できない」といわれました。他のデッサンは「うますぎる」といわれました。これは画家にとって大変な戒めの言葉でありまして、ほんとうに深くみつめないで、達者に画を描いている画家にとって一番痛い言葉でした。」
「この日、私の作品を額縁に入れて持っていきましたところ、先生は「絵は額縁に入れて美しくみえるようではだめです。重いのに何も額縁を持ってくることはない」といっておられました。そういえばニースもここにもアトリエに一枚も額縁は置いてありませんでした。」
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