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2020年6月29日 (月)

ものの見方

6月27日(土)

土曜日はギャラリーは5時に終了。そのあと、中村宏太作品の撮影を寺崎誠三が行う。ガラス作品をアクリルの額に入れてあるので、撮影に手こずっている。時間がかかるかもしれない。

Photo_20200629121601

バルコニーに西山真実さんのお友達が何人かいて、帰ろうとしていたが、わたしが「撮影で時間がかかってるから、ゆっくりしてってもいいですよ」というと、テーブルに戻って談笑を続けていた。

事務所では、上條陽子がワインを飲んでいて、関水さんが相手をしていた。

土曜日は5時に終ることを知らなくて、7時までだと思っていた上條さんは、ずっとおしゃべりをしていて楽しかった。安井賞を獲ったときの話が興味深かった。女性で初めての受賞ということで、いろんなところからの風当たりが強かったそうだ。かなりひどいことを言われた。「女が絵を描くもんじゃない」などと言う人までいたそうである。今ではちょっと考えられないが、まだ若手の女性が獲ったことで、妬みや僻みもあったのだろうと思われる。ノイローゼ気味になってしまったが、安井賞を獲ったことで、フランスに1年間留学できたので、日本から「逃げる」ことができた。フランスから帰ってきて、さてこれからどうしようかと悩んで、どんな絵を描いたらいいのかというプレッシャーもあるなかで、所属していた団体との軋轢などもあり、彼女は団体を辞め、そうだ、なんでも自由にやろう!と決めたそうである。現代美術をやろう、と思ったわけではなく、好き勝手にやっていて、気づいたら現代美術の真っ只中に居たということらしい。

上條さんは、ギャラリーは5時までなんですよと教えると

「あらそうなの?じゃ帰ろうっと」

と階段を降りて行った。

撮影も終ったので、電気を点けてドアを開けると、バルコニーに居た西山さんのお友達が入ってきて、改めて西山作品を見て、購入してくれた。

ル・クレジオ 『隔離の島』 を半分ほど読み進んだ。なんだかため息が出る。疲れるからではなくて、あまりにも美しいからである。天然痘で小さな島に隔離されて、食べ物も水も乏しいなかで、悲惨な生活を続けていて、死者も出て、みんなで火葬したりするのだが、そんな暗く苦しい状態を描写しているのに、なぜか全体としては幻想的な詩を読んでいるような、不思議な時間の中に招きいれられるのだ。

どんなものや状況を描写しても、結局は作者の「人柄」が出てしまうわけで、美しい描写ができるというのは、作者の魂の美しさを反映したものなのだと思う。

こんなふうである。

「だが、ぼくは炎を燃やしつづけている。それを消したくない。隔離所の建物の黒い壁、太陽のきらめきと海、死に取り囲まれた牢獄のようだが、すべてがぼくに復讐の火花を送り返してくる。ぼくは自分の内奥に、この島の玄武岩でできた心臓を宿している。」

昨日、ロベルト・ロンギの『イタリア絵画史』(ちくま学芸文庫)を買った。

Photo_20200629124401

のっけから、刺激的な言葉が並ぶ。

「いまさら言うまでもないが、芸術とは現実の模倣ではなく、個人的な現実解釈である。

……

画家は、明確な枠組みを有する濃密な視点から世界を見る。その視点こそかれの絵画的見方であり、視覚的現実の果てしないカオスはその見方へと還元されるのである。

美術において常に繰り返される方程式は次のようなものだ。すなわち、

芸術-様式=見方    」

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