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2019年5月11日 (土)

心の支え

コレクション展の初日に、評論家のS氏が、菅木志雄の版画作品を見て言う。

菅木志雄 「集置」 リトグラフ 50×64cm 制作年? ¥300,000

Photo_92

「吉岡君、これはダメだよ。まだ見せちゃだめ。もう少し隠しておいた方がいいよ。あと何年かしたら(値段が)どーんと上がるから」

そんなこと言われても出してしまったのだからしょうがない。

そもそも、菅さんは版画作品は作ってないはずだから、これは超レアなのである。菅さんの版画を見たことのある人はいないんじゃないかな。

この作品の右下を見ると、こんなふうになっている。

Up

これは、どんなふうになっているのかというと、版が3枚あり、それを順番に重ねて刷っているのである。重ねたんだよ、ということがわかるように、こんなふうに隅を切っているわけである。版の元になっているのは包装紙である。市販の包装紙の図柄を版にしているのである。

S氏は「隠しておけばいいのに」

と言うが、隠しておけないのよ。

見せたいのである。こんなの持ってますけど何か?ってね。

ギャラリーに来る人は、みんな珍しそうに見ていく。さっと見て出て行く人はなにも知らない「素人さん」である。

お客さんを品定めするのに都合がいい。

ボイスとか、菅さんとかの作品は、売れないかなあ…と毎日期待しているのだが、こころの奥底では「売れないといいなあ」と思っている自分もいる。

売れてしまったらたぶん寂しくなってしまうだろう。

今回こういう展示をしてみて、この作品は、わたしの心の支えになっていたんだなあ、という事実を発見して、ちょっとびっくりした。

コレクターと呼ばれる人たちもこういう気持ちなんだろうか。見せたいし、隠しておきたい。売れるといいけど売りたくない。

いい作品は、心の支えになるのである。

誰かの心の支えになるような作品を作らなければならない。いい加減な作品は支えにはならないだろう。

島崎藤村の 『桜の実の熟する時』を読み終わる。

次に 『春』を読まなくては、と思って教文館に行く。新潮文庫を探したが、『春』だけなかった。岩波文庫にはあったのだが、新潮文庫で読みたいと思って書棚に現われるまで待つことにした。岩波文庫のは字が小さいのだ。

で、なにか読むものが欲しいと思って買ったのが

澁澤龍彦 『滞欧日記』(河出文庫)

Photo_93

澁澤龍彦の文章は、あまり好きではない。馴染んでこないのだ。サドの小説は澁澤が訳しているが、他の人の訳で読みたいと思った(それでもサドは面白かったのだが)。人を見た目で判断してはいけないが、澁澤の見た目も好きにはなれない。

三島由紀夫は太宰治が嫌いだったそうで、作品だけでなく、見た目も嫌いだと書いていた。

三島だって、他の人をそんな風に言える風貌ではないだろうに。

澁澤はなんでいつもサングラスをしているのだろう?どの写真でも斜に構えて格好つけている。鼻持ちならないほど気障である。ヨーロッパに行ったときは奥さんといっしょだったのに、奥さんの写真は1枚もない。全部自分が写っているのである。ビジュアル系のロックバンドのボーカルみたいである。自分のことをかっこいいと思っていなければできないポーズでファインダーに収っている。

まあ、そんなことなのだが、この 『滞欧日記』に関しては、非常に面白いと思った。

ヨーロッパ旅行記なのだが、そのほとんどが美術館巡りである。写真も豊富である(澁澤は写ってなくていいのに必ず写っている)。

『春』を手に入れるまで、これで我慢しよう。

 

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