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2018年11月 6日 (火)

前田精史の物語性

変化は少しずつ起こる。急激な変化、変容と見えるものでも、それは緩慢なペースでの変化が積み重なったものである。

今回の前田精史の彫刻作品も、明らかな変化を見せつつあるが、急に思い立ったというような変化ではなく、前田の、徐々に変る日常が、その精神に反映したものであると考えるのが妥当であろう。

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では、どのように変化したのであろうか。

それはひとことで言うなら「物語」であるとわたしは考える。

これは「種まき器」と題された作品。

「種まき器」 鉄・真鍮・ 他 30×30×5cm 1998-2018 ¥250,000

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鉄の板に金属のパイプが埋め込まれていて、そのひとつに、ビニールパイプがつながれている。どうやって種をまくつもりなのだろうか。ここにはすでに物語が発生している。

「欲望」 鉄・樹皮・貝殻 90×180cm 2018 ¥600,000

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鉄板の抽象彫刻の上に貝殻と樹皮が取り付けられる。

具体物の登場である。この貝殻と樹皮は、純粋に形や色が面白いから付けてみたのではないことは見るだけでわかるだろう。これは造形であり、言葉でもある。言葉は饒舌であり、すぐさまシュールレアリスティックな物語をつむぎ出すのである。

冷たい静謐な金属抽象彫刻を作る作家と思われていた前田の、奥に(裏に)隠れていた情念が滲み出してきているのかもしれない。

「Rebirth」 鉄・アルミ 他 サイズ可変 1994-2018 ¥1,200,000

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これはあきらかに樹木のイメージを形にしたもので、小さな葉っぱまで付いている。有機的な形がわれわれの眼を惹きつける。

これなんか、もう葉っぱだもんね。

「葉・葉・葉」 アルミ サイズ可変 2018 各¥10,000

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事務所の壁には小品をたくさん並べた。

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「white area Ⅶ」 楠・ジェッソ 15×15×3cm 2018 ¥15,000(売約済)

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「dance(黄)」 紙・合板・塗料 24×24×4.5cm 2017 ¥21,000

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テーブルの上には「葉っぱ」が50枚。

「leaf」 アルミ・銅 24×4.5×4.5cm 2018 各¥10,000(アルミ)、各¥12,000(銅)

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こうやって並べると涼やかであるが、制作の方法を聞くと、かなりハードな仕事であるらしい。アルミと銅の棒を叩いて葉のよぷな形に成形するわけだが、鉄床の上でハンマーを振り下ろしながら一日中叩いていると、腕がパンパンに腫れあがるそうである。一日がんばって3点が限界だそうである。

作品の上の物語を読むのも楽しいが、前田の個人的な物語も含めると、さらに味わい深い。


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