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2018年11月 1日 (木)

『新生』

島崎藤村 『新生』の前編を読み終わり、後編も半ばを過ぎるところまで進んできた。

藤村というと、なんだか堅そうで、読もうと思わなかったのだが、『藤村とパリ』を読んで、藤村の作品も開いてみようと思ったのであったが、いきなり 『新生』でよかったのかどうか迷うところだが、『藤村とパリ』は 『新生』と重なっているので、まあしょうがないのである。

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藤村は子供がたくさんいたのだが、次々と病死していき、奥さんも死んでしまって、意気消沈していたのだが、親戚の姪が二人住み込みで藤村の家の手伝いをすることになって、なんとか一家は無事に生活している。しばらくして姪の姉のほうは結婚して家を出て行く。残った節子だけががんばって家の世話をしている。なんということもない、平和な日々を送っているのだが、ある日突然節子は、「わたしは母親になります」と告白するのである。赤ちゃんができたのである。

え?え?え?

読みすすんでいくと、赤ちゃんの父親は、なんと藤村なのである。

何の伏線もないまま、いきなりの急展開に仰天する。

井上荒野の小説もたじたじの暗転である。

この小説は、「事件」後かなり経ってから、新聞に連載されたのであるが、これを読んだ田山花袋は、驚き焦って、これは大変だ、藤村は自殺するかもしれないと心配したそうである。

節子が妊娠したことで、藤村は慌てふためき、気が動転し、毎日煩悶しながら打開策を考えるのであるが、なかなか解決する方法が見つからない。

結局どうしたかというと、フランスに留学することにしたのである。

逃げたわけである。

3年間(3年半)、藤村はフランスで過すことになるのだが、この経緯とフランスでの生活を追ったのが 『藤村とパリ』なのであった。

『新生』は特異な小説である。姪との不倫、そしてパリでの生活は旅日記でもあるし、それが混在していて、読むほうは混乱する。そこが面白いんだけどね。文章も文豪らしからぬ荒いタッチで、それがリアルでもあって、苦しい小説なのに、読む手が止まらなくなるのである。

節子は、子供を生むのであるが、その子供は里子として、引き取られていく。赤ちゃんの父親は、ある男なのだが、今は行方不明になっているということにしたのである。

パリでの生活に登場する人物は名前を変えているのだが、『藤村のパリ』を読むと、これは誰で、こっちは誰々ということがわかって面白い。

日本人画家との交流もかなりあったらしい。ある年の忘年会で酒を飲む。酔っ払ったやつが、変な踊りを踊って、誤って鍋だか薬缶だかに沸騰していたお湯を藤村と山本鼎がかぶって、大やけどを負ってしまうのである。何日も熱が出て苦しむほどのひどい火傷だったらしい。医者にに行き、手当てをしてもらって、宴会場に戻ると、件の男はまだ踊っていたので、あきれてものも言えなかったそうだ。この男というのが藤田嗣治である。

藤村は画家たちを野蛮人と思っていたようである。

フランスから帰ってからどうしたかというと、藤村は、また自分の家に帰るのだが、節子もやはり待っていて、これからどうするのか…。それを今読んでいるところなのである。

いやはや、どきどきさせっぱなしの小説なのである。

またつづきを書くかな。

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