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2018年4月 9日 (月)

行く

朝起きてから家を出るまでは、だいたいテレビを見ている。ワイドショーを見ている。主婦である。ワイドショーはくだらない内容がだらだら続く。くだらないから面白いということもできる。

今朝は、困った新入社員についてインタヴューしていた。4月だからね。先輩社員が、こんなとんでもない新人がいるんだよ、と愚痴っているのである。タイトルは「あぶない部下」。

それをぼうっと見ていたら、出かけるのが遅れてしまった。

電車の中で、田山花袋の『布団』を読み終わる。その中に『重右衛門の最後』という作品があり、こんな文章を見つけてわたしは、これだ!と心の中で叫んだ。

「自分に向っては、

「それじゃ、先生様失礼しやす!」

自分の挨拶をも聞かず、

「一所に歩(アユ)べ……おい、作公、何を愚図々々してやがるんだ?」

と怒鳴りながら走って行った。」

こんななのだが、前後がわからないので、なんのことかわからないと思うが、話の内容ではなく、「歩(アユ)べ」という言葉に注目していただきたいのである。

この話の舞台は長野県である。長野では歩くをアユブと言うんだね。

この文章の文脈から、この「歩べ」は、「行こう」という意味で使われている。

じつは、同じような言葉が山形にもあるのである。

行くという言葉の活用形は

行かない

行きます

行くとき

行けば

行こう

である。

山形では行くは行ぐである。

活用形は

行がね

行ぎだぐない

行ぐべ

行げばいいべした

となる。

なぜか行ごうとは言わない。どこどこに行こうというときは、山形では行ぐべという言葉で代用するので、実際は「行ご」という活用形は無いのである。

ところが、じゃあ、行こうと言いたいときは行ぐべとしか言わないのかというと、行ぐべの替わりに「あべ」ということばを使うことがあるのである。早く行こうは、早ぐあべ、と言う。

わたしは、なぜ、行こうというのを、あべというのかわからないまま、今の今まで使っていたのである。

方言というのは、漢字にすると、その意味が明確になる場合がある。

昔、山形弁のなかでも米沢地方の言葉を紹介したことがあるが、覚えていらっしゃる方はいるだろうか。いないかな…

米沢では、恥ずかしいことを「しょうしい」と言う。また、ありがとうを「おしょうしな」と言う。

この「しょうし」は漢字で書くと「笑止」ではないかとわたしは考えている。どうだろうか。

また、米沢でお店に買い物に行ったときは店先で「あっあーーいん」という不思議な呼びかけをする。ごめんくださいという意味である。なぜこんなへんな言葉があるのか不思議でならなかったが、あるとき、ラジオで、珍しい方言とうい番組で、この米沢地方の「あっあーーいん」が紹介されていてびっくりしたことがある。その解説によると、この「あっあーーいん」を漢字で書くと「初会」なのだそうである。「はつあい」と読む。初めましてということになるのだろうか。「はつあい」が「はっあい」になり、「はっあいん」と訛り、「あっあいん」、「あっあーーいん」と変化したのである。すごいことである。方言の表現は意外と優雅なのである。

さて、「あべ」であるが、みなさんもうお分かりだと思うが、長野の「あゆべ」が山形では「あべ」になっているのである。「あべ」は「歩べ」と書くのであろう。

これでわたしの驚きと喜びの意味がおわかりになったのではないかと思う。

以上

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