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2017年2月 2日 (木)

小さなギャラリー

1月31日(火)

パフォーマンスの公演「NIPAF」が今開催されているが、その参加アーティストたちを引き連れて、霜田誠二がやってきた。

いろんな国からやってきたパフォーマンスアーティストだ。10人くらいだろうか。

そこに、今展示している作家のマリヤーナさんが、セルビア大使館のイェレナさんとやってきたので、ステップスは国際交流の場と化した。

Photo

わたしはお茶とコーヒーを人数分淹れたりして大忙しになった。人数が多いので事務所のスペースに全員が入ることができなかったのだが、みんなめちゃくちゃ元気なので、バルコニーで寒風に吹かれながら、マリヤーナがもってきてくれた饅頭を頬張りながら盛り上がっていた。

霜田誠二はこういう連中を集めて、何十年も企画を続けているのだった。真似はできない。

海外のアーティストと付き合って、展覧会を開くのは、本当に疲れてしまうのだが、それは、やったらやったで日本人とは違うタイプのエネルギーをもらうことができるので、またやろうかなあ…とか思ってしまうのである。

霜田誠二が連れてくるアジアのアーティストたちは、ステップスを見ると、とても驚く。

「わー、小さい」

というのが彼らの第一声である。

ステップスギャラリーは日本のギャラリーでも小さいほうなのであるが、アジアのアーティストから見ると「とても小さい」のである。

たとえばバングラデシュなんかでは、ギャラリーといえば、みんなとても大きくて、貧乏アーティストたちには敷居が高い感じなのである。ギャラリーを経営しているのは「お金持ち」なわけで、小さなギャラリーなんて全くなくて、ギャラリーといえば、大きなものであるという感覚しかなくて、小さなギャラリーというイメージはないのである。

で、ステップスを見ると

「なあんだ、ギャラリーはこれでいいんだ」

と安心するようなのである。

「おれも、ギャラリーやってみようかなあ」

とか思うらしいのである。アジアに小さなギャラリーがたくさん出来る日が来るかも知れない。

パフォーマンスの公演は運営がとても大変である。とにかくお金がない中でやっているので、海外から来るアーティストたちも浅草のカプセルホテルに泊まって、立ち食い蕎麦を食べながらパフォーマンスをやり、吉野家で牛丼を食べて移動するという感じなのだが、それでもみんなとても楽しそうなのだ。

アートはさ、やっぱり情熱だよね。

表現しないではいられないという切羽詰った欲求がある。

ヘンリー・ミラーの文章を少しだけ紹介したい。ちょっと難しいかもしれないが、ミラーが小説を書こうと決心する件なので、そういう文章だと思って読むと分かるかも。

『南回帰線』から

「すべての出来事は、それが何らかの意味を持つとき、矛盾の形をとって現われる。今この物語を捧げている女性の現われるまで、ぼくはいわゆる人生においては、すべての問題の解決はどこか外部にあると考えていた。その女性にめぐり合ったとき、僕は今こそ人生をわが手に握り、咬みつきかぶりつけるものを摑んだように思った。だがその実、ぼくは人生を完全に取り落としてしまった。すがりつくものを求め手を伸ばしたのだが―何も見いだせなかった。しかし、何かを摑まえすがろうと(時世に置き忘れられるのもいとわず)けんめいに手を伸ばすうち、ぼくはそれまで求めていなかったものを―ぼく自身を―見いだした。ぼくが生涯を通じて求めていたのは、(他の人間たちのやっているのが生きることなら)生きることではなく、おのれを表現することにあったのに気づいた。考えてみれば、ぼくはこれまで生きることに関心を抱いたことはなく、ぼくの関心はただ現在の行動に、人生にも匹敵し、人生の一部であると同時に人生を超越しているものにしかないことを悟ったのだ。真実も現実も、ほとんどぼくの興味を惹かない。ぼくの興味の対象は、ただ想像の描き出したもの、生きんがため日ごと抑えてきたものだけなのだ。きょう死のうが明日死のうが、そんなことはこれまでも現在も、ぼくにとっては何ら重要な意味を持たなかった。だが、何年も努力をつづけてきたあげく、今日にいたるもまだ自分の考え、自分の感じを表明できないこと―それがぼくを悩ませ、ぼくの心に食いこむ。幼い時分から、ぼくは何の楽しみも持たず、ひたすらこの本能、この能力のみを願い、この亡霊を求めつづけてきた。その他のすべては―この努力に関与せぬぼくの一切の行動は―嘘なのだ。ぼくの人生の大半を占めているのは、それなのだ。」

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