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2017年1月14日 (土)

ブランカさんの本

1月13日(金)

品川のセルビア大使館へ。今夜は高橋ブランカさんの出版記念トーク。会場は満員であった。

ブランカさんが日本語で書いた小説集『東京まで、セルビア』のお披露目である。

ブランカさんの紹介をまずしなくてはならない。写真はかなりぼけてしまった…

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高橋ブランカ

作家、翻訳家、写真家、舞台女優

1970年 旧ユーゴスラヴィア生まれ。1993年 ベオグラード大学日本語学科卒業。1995年 来日。1998年 日本に帰化。1998年~2009年、夫の勤務で在外生活(ベラルーシ、ドイツ、ロシア)。2009年から東京在住。著書 『最初の37』(2008年、ロシアで出版)、『月の物語』(2015年、セルビアで出版、クラーリェヴォ作家クラブ賞受賞)。

今回出版した本

『東京まで、セルビア』

発行所:未知谷(ミチタニ) ¥2,000

Photo_2

表紙の写真もブランカさん。

タイトルの「東京まで、セルビア」というのは、「私にとっては、ここ東京もセルビアなのである」という意味とのこと。

未知谷の飯島さんが本の紹介をした。

会場から質問が出る。ブランカさんの本を出版するにあたり、どんな基準で彼女を選んだのか?「売れる」という見込みがあったからか?というものであった。飯島さんの答えは明快であった。「出版業というのは、もはや商業活動ではないのです。」

つまり、儲けるためにやっているわけではない、いい作品を選んでいるだけであるということだな。

このあと、ブランカさんの作品説明が簡単にあり、小説の朗読を俳優の西村清孝さんが行なう。ブランカさん本人の朗読もあった。

わたしは帰りの電車の中で読んでみたが、読み始めると、小説の世界にあっという間に持っていかれてしまう。面白い。

ブランカさんの日本語は日本人となんの変わりもない。文章力も日本の作家より上かも…と思うレベルである。セルビア語で書いて日本語に訳しているわけではなく最初から日本語で書いている。日本語の著書を自分でセルビア語やロシア語に訳したりしているらしい。

トークのあと、質問がいくつも出た。政治、歴史、宗教などについて、突っ込んだ質問が出て面白かった。宗教について本気で勉強をして、無神論にたどり着いたというのが面白かった。

話の中で、わたしの印象に残ったのはこんなこと。

「私はこれからも日本で、日本語で作品を書いていくつもりである。「女流」という言葉は西欧では「二流」という意味もある。しかし、日本で「女流」というとき、「二流」という意味は含まれていない。そこがいい。」

『本の雑誌』(2017年2月号)に江南亜美子さんが書評を書いている。

「…翻訳の問題を考えるとき、高橋ブランカ『東京まで、セルビア』(未知谷 2000円)はひじょうに興味深い。旧ユーゴスラヴィアのセルビア生まれた著者は、ベオグラード大学で山崎佳代子に師事し、1998年に日本に帰化した。ロシア語で創作した作品を日本語やセルビア語に訳し、また日本語で書いたものをセルビア語やロシア語に自ら訳すと、あとがきにある。

たとえば「しあわせもの」は、完璧に見える女友達のダリヤとの長い友情をヤスミーナが回想する。嫉妬や憧れが渦巻く思春期や20代を乗り越え、友愛的な関係を構築する40代のふたり。しかしふいに、異なる位相の語り手が現われ、ダリヤ本人すら知らないダリヤの人生のダークな部分を映し出していく。

あるいは「赤毛の女」では、「私」のよき隣人であり友人でもあるニーナの、赤毛にまつわるほろ苦いエピソードが集積されていくのだが、いつのまにか視点は「私」からふらふらと浮遊し、三人称へと着地する。

統御的な視点人物から、意識的にか無意識にか外れてゆく視点の自在さは、安定的な語りを求める読者をおそらくは不安に陥れる。固定的でない語りのゆらめき。しかしなんとも言えず魅力的でもある。本書でしばしばテーマとなる、「無神論」的視点の設定と呼びうるかもしれない。しかしまだ判断は保留しよう。この書き手が今後どんな作品をみせてくれるか、注目していたい。」

トーク終了後、かんたんなパーティー。セルビア料理をつまみながら、ラキアを飲んだら酔ってしまった。

酔ったまま電車に乗って帰ってきた。


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