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2017年1月19日 (木)

お忍びマグカップ

1月19日(火)

中村ミナト展は連日盛況である。夕方になるとミナトさんの知り合いが増えて、ワインを開けるのである。今日も、金属作家の今井由緒子さん、勝又豊子さん、そしてミナトさん、「3人の鉄の女」が揃い、倉重光則を加えて宴会になってしまった。

昼には笠間から藤本均定成さんが来た。昨年の交通事故で、しばらく仕事を休んだりしていたのだが、復活して、ステップスで注文していたマグカップと湯のみを持ってきてくれる。

若い女の子を連れている。東京のギャラリーに紹介して回っているとのことだった。

「そういうことだからさ、これはお忍びなんだよ。お忍びということにしておいてね」

他言は無用ということなのだろう。

「わかりました。では、ブログに、お忍びで来た、と書いておきますね」

これが新作、お忍びマグカップである。

Photo

今までステップスで販売していたのとは少し違っている。サイズが少し大きくなったのと、色がずいぶん濃くなっている。鉄の色といったらいいのだろうか。磁石にくっついてきた砂鉄のような渋い色合いである。

価格は変わらず一つ¥1,600である。

湯のみの方は数が少ないので、欲しい方はお早めにお求め下さい。

☆☆☆

小川洋子の小説の中に、「パーティー荒らし」が登場しているので面白い。

『夜明けの縁をさ迷う人々』(角川文庫)に収録されている『ラ・ヴェール嬢』という作品がそれである。

指圧師の主人公が、老婆であるラ・ヴェール嬢の足裏をいつもマッサージしているのだが、彼が、或る日、ラ・ヴェール嬢を街で見かける箇所。

「町で一度だけラ・ヴェール嬢を見掛けたことがある。金曜の夜、お客様の家へ向かって大通りを歩いている時、すぐ前を行く老人がラ・ヴェール嬢だと気づいた。毛玉だらけの青いカーディガンに、くるぶしまで隠れるフランネルの長いスカート姿、頭には花柄のネッカチーフを巻いていた。ベッドに横たわる姿よりも老いて見えたが、スカートの裾からわずかに覗く足で、すぐに彼女だと分かった。たとえ磨り減った革靴に隠れていても、私がその足裏の形を見逃すわけがなかった。

ラ・ヴェール嬢は週末の夜で賑わう通り沿いの、一段と華やかな明かりの点った画廊へ入っていった。オープニングパーティーでも開かれていたのだろう。中はお洒落に着飾った人々であふれ、美味しそうなご馳走とシャンパングラスが並んでいた。

「困るんです」

やがてすぐにラ・ヴェール嬢が、画廊の主人らしい女に腕をつかまれ出てきた。

「招待状のない方は、お引き取り願います」

女主人はラ・ヴェール嬢を通りへ突き出した。動揺する様子もなくラ・ヴェール嬢は、乱れたネッカチーフの結び目を直した。それから十分な間を取り、無礼な者を相手にしている暇はない、とでもいうかのように画廊に背を向け、私に気づきもしないまま再び歩きだした。

「あの、さっきのご婦人は……」

舞い戻ってこないようにと入り口で睨みをきかせていた女主人に、私は尋ねた。

「パーティー荒らしです。勝手に紛れ込んできて、料理を食べあさるんです。あのお婆さん、このあたりでは有名ですよ」

そう言い捨てて女主人は画廊の中へ消えた。私はラ・ヴェール嬢の後ろ姿を捜したが、親愛なる足裏は、もう既に人込みに紛れて見えなくなっていた。」

★展覧会

☆コレクション展 3 「反映の宇宙」

特集:上田薫

1月28日(土)-3月26日(日)

神奈川県立近代美術館 葉山

上田薫氏によるアーティストトーク

3月11日(土)午後2時-3時

☆ニパフ国際’17「夢で会いましょう」

1月30日(月)、31日(火)、2月1日(水)

3331アーツ千代田(銀座線末広町駅から徒歩2分)


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