2017年9月19日 (火)

ドイツの作品

ドイツから戻って、一ヶ月経った。まだ一ヶ月しか経ってないのか、と思えるほどなんか忙しいのだが、いまになっていろいろと思い出して、考えることが多い。

ドイツの美術は、コンセプチュアルが主流であって、絵画表現なんて無いも同然と言うと、ギャラリーを訪れる作家さんは驚く人が多い。それはみんな知っていることだろうなと思っていたが、そうでもないということがわかって、わたしは、これを伝えなくちゃいけないんじゃないか、と思っているのであった。

で、「ドクメンタ雑感」という文章を書き始めることに決めたところである。

「そりゃ、書かなきゃダメでしょ」

などと言う評論家の方もいるので、がんばって書いてみようと思う。今年中にはできるかな。

ニューヨークに居た日影眩は

「ニューヨークにはもう絵なんてないよ」

と言うし、アメリカとかヨーロッパとかの美術状況が、いかに日本とは違っているのかを、われわれは知っておく必要があると思うのである。

今年は、「ドクメンタ」と「ヴェネツィアビエンナーレ」と「ミュンスター」が3つ重なって開催されているので、日本からもたくさんの人が訪れたようであるが、見て来た人たちは何を思ったのだろうか。

美術でいったい何をやろうとしているのだろうか、その辺の根本的なことから問い直していかないと、日本の現代美術は、宮田徹也が言うように、「虫の息である」ことを具現することになってしまうだろう。

今、わたしはアガーテンブルグ城で行なわれている展覧会の、ウテ・ザイフェルトの作品を思い浮かべている。

それは、日本語とドイツ語で書かれた文章に、その文章とは別に、「ばしょ」「orte」という文字が切り抜かれてあり、そこに光を当てて、文字が壁に投影されるようになった作品である。

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ドイツのコンセプチュアルアートを代表する、と言ってもいいような秀逸な作品である。コンセプチュアルアートというのはある意味、言葉の作品であると言える。実際に文字を扱っていなくても、作品から文章が立ち上ってくるような作品が多い。さらにウテさんは、そこに網膜に訴えるような美しさも加えていて、日本好きらしく日本語も駆使しながら、静かにわれわれの情感に訴えるのである。

「ながいみちはみじかいみちで みじかいみちはながいみちですか?」

「ふるさとはいっしゅんですか?」

などという、詩のようなことばが書き連ねられているが、これは、ウテさんが作った文章?と訊くと、日本語を習ったときに出てきた言葉たちだという、謎の言葉が返ってきた。

わたしは、今の日本の美術の状況が、このままでいいとは全く思わないのだが、希望を失っているわけでもない。


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2017年9月16日 (土)

槙野作品のアップ

槙野央作品は、近寄ってアップで見ると、その魅力がさらによくわかります。

木の彫りあとがわかったり、筆の微妙な震えがあったりして楽しいのです。

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☆展覧会

「平石 裕 展」

9/30(土)-10/14(土) 月曜休廊

ATELIER・K(横浜市中区石川町1-6三甚ビル3F)

「不良実存」

10/8(日)-30(月) 土・日・月 open

13:00-19:00

Emi スタジオ(千葉県鴨川市江見東真門342)

参加作家:大川祐/刈込芳一/菊井崇史/木原真男/倉重光則/小林誠/篠原誠司/高島芳幸/武内和則/藤本均定成/増田直行/水野俊介/宮田徹也/山田和夫/山田葉子/山本伸樹

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これは倉重光則の企画。鴨川はちょっと遠いけど、一度行ってみるかな…

と思っています。

まだまだ9月で年末までは時間があるのですが、私の頭の中はすでに年末年始で、来年の案内状のデザインに入っているところです。

やることはいっぱいあるのに気力と体力がついていってません。

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2017年9月13日 (水)

赤とんぼ

9月11日(月)

土曜日に金澤麻由子展の搬出、日曜日は午前中、槙野央展搬入のあと、ブログを書いてから金澤作品梱包。売れた作品を包んで、宛名書きをして…終わったのが夜の7時を過ぎていた。たくさん売れちゃったので、梱包が死ぬほど大変なのである。贅沢な悩みではある。

今日と明日は、わたしは身体を休めるのである。

昼まで寝ていて、午後から起きだして、駅前まで出て、お昼を食べようとうろつく。ちょっと歩いたところに美味しい蕎麦を食べさせる店があるので、そこで蕎麦ランチを食べようと思い、行ってみたが、なぜだかお休みだった。あらまあ、残念。あ、ひょっとしたら「赤とんぼ」はやってるかな…と思って店のあるビルに行ってみたら、やっているようだったので、今日は赤とんぼでのんびりすることに決める。

駅前にお酒屋さんのビルがあり、そこの3階が赤とんぼである。昼は喫茶店、夜はバーという店である。立派なバーカウンターがあり、棚には洋酒がいっぱい並んでいる。たぶんだけど、このビルは酒屋さんの持ち物で、せっかく酒があるんだから、バーでも開こうと考えたのではないのだろうか。

商売っ気が全くないのである。余裕でというか趣味でやっている感じなのである。休みも多い。というかめったにやっていないといっても良いくらいである。

ランチはとくに美味しくはない。あまり料理の上手でないお母さんが一所懸命に作っている感で溢れている。

わたしはなぜこんな店に行くのかというと、椅子とテーブルがゆったりしているからである。身体が沈みこみそうなゆったりした椅子と高そうなテーブルが置いてあるのである。全面ガラス張りなので、窓から街路を見下ろしながらコーヒーを飲み、煙草をふかすのである。

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わたしは、ナポリタンとアイスコーヒーを頼んだ。

わたしのほかには、4人組のおばさんが大きな声で笑いながらおしゃべりしているほかは、ひとりでランチを食べているこれまたおばさんが2人いるだけである。

このビルには、ヨガとか、なんとか教室みたいなスペースがあるので、ここのお客はほとんどがおばさんなのである。

そこに新たにもう一人おばさんが現われて、席に着いた。

「あら、○○さんじゃないの?」

と4人組の一人が話しかける。知り合いらしい。

「あらあ、何年ぶり?」

「変らないわねえ!」

「お化粧もしてないのよ」

「お化粧してなくてそれだけなんだからすごいわあ」

わたしは、ケチャップの効き過ぎた腰のないグダグダのスパゲティーを口に運びながら、お化粧したら逆効果だろう、などと考えている。

「私もうナナハチよ」

78歳ということらしい。

「このあいだ、三途の川を渡りそこなったのよ」

「あらあ、どうしたの」

病名はわからないが、家で倒れて救急車で運ばれたらしい。

「三途の川が見えたのよ」

「それって、本当に見えるの?」

「見えるのよ。そしたらさ、川の向こうから、誰かが、あんたはまだ来ちゃだめえー、あんたはまだ来ちゃだめー!って叫んでるの」

「…」

「気がついたら、救急なんとかいう部屋にいたわよ」

「I C U ね」

わたしは、水で薄めたようなアイスコーヒーを飲みながら、煙草に火を点けた。

そこへ、お店の人が

「これ、よかったらどうぞ」

と言ってお皿をコトンと置いていった。

三角に切った西瓜が載っている。

サービスである。

西瓜ももう終わりだなあ。

思いのほか冷たく冷えた西瓜はとても美味しかった。

9月12日(火)

今日もゆっくり起きて、午後からマッサージに行く。いつもの肩や背中のほかに、今日は足裏マッサージも追加して全部で150分やってもらって身体がずいぶん楽になった。

あとは喫茶店で読書。

今読んでいるのはアナトール・フランスの『シルヴェストル・ボナールの罪』。本に埋もれてひっそり暮らす老学者の話だが、なかなか面白い。

或るとき、本の背中に小さな小さな女が現われて、ボナールに話しかける。妖精である。

この妖精の老人に語りかける言葉が、鋭くて美しい。

「シルヴェストル・ボナールさん、あなたはくだらない偽学者です。かねてそうだろうとは思っていたのですが。ズボンの前からシャツの先をのぞかせて道をうろついているどんな小さい子どもでも、やれ学士院やれ学会の、眼鏡をかけた方がたよりは私のことに明るいのです。知識はそらごと、空想こそはすべてです。空想したもののほか何もありはしないのです。私は空想が生んだもの。それこそ「ある」ということではありませんか。人が私の夢を見る、すると私は姿を現わします。すべてはただ夢ばかりです。ところがシルヴェストル・ボナールさん、誰もあなたの夢なぞ見る者はないのですから、あなたこそこの世にありはしないのですよ。私はこの世を魔法にかけてしまいます。私はどこにでもいるのです。お月様の光のうえに、隠れた泉のおののきのなかに、ざわめき動く木の葉かげに、朝な朝な、牧場の窪地から立ち上る白い狭霧のなかに、ばら色のヒースの茂みのなかに、どこにでも私はいるのです。…人は私を見、私を愛してくれます。落葉に歌をうたわせてゆく軽い私の足あとに、みんなは吐息し、おののくのです。私は小さい子供をほほえませ、どんなおろかな乳母たちにも機知を働かせてやります。揺籠のうえをのぞきこんで、からかったり、慰めたり、眠らせたりします。それだのにあなたは私がいることを疑っていらっしゃる。シルヴェストル・ボナールさん、あなたの着ていらっしゃる暖かい綿入を一枚ぬいだら、下には馬と鹿の皮があるのですよ」

本も買った。

読まなければいけない本が溜まってきた。

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高橋順子 『夫・車谷長吉』(文芸春秋)文庫ではないが、読みたくて買ってしまった。

井上荒野 『結婚』(角川文庫)

佐々木幹郎 『中原中也』(岩波新書)

木田元 『哲学散歩』(文春文庫)

ゾラ 『ナナ』(新潮文庫)

さて、どれから読もうかなあ。『ナナ』が気になってしょうがないが、どうしようかなあ…


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2017年9月10日 (日)

槙野央展

9月10日(日)

先ほど槙野央展の搬入が終了。

くどいようであるが、展覧会は13日(水)からである。

くどいついでに言うと、槙野作品は、木彫である。木を彫って、その上にアクリル絵具で、筆を使って手描きしたものである。

このブログで初めて槙野央を知る方もいるかも知れないので、確認のために書かせていただく。

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ギャラリーには作品が6点。

わりと適当にならべているように見えるが、じつはその位置には秘密が隠されている。

今回の展示は「銀座シリーズ」である。

これは一つ目のヒント。

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そして、もう一つのヒントはこれである。

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わかるかな、床の上にグレーのバッテンが小さく置かれている。

これは「現在地」を意味している。

これでわかったでしょう?

そう、作品の位置は、その商品を売っているお店の位置である。つまり、ギャラリーが銀座の地図になっているとでうわけである。

では、そのお店を一軒ずつ見ていくことにしよう。作品ひとつずつには槙野の言葉も添えられているので、それも書き写してみる。

六丁目「背景のアマンド」 2017 ¥40,000

「前衛芸術『首都圏清掃整理促進運動』、白衣にマスクの男たちが路上を過剰なまでに清掃したというアートで、その状況をとらえた有名な写真があるのだが、彼らの左後方に『アマンド』は写っている。1964年10月16日(10月10日にオリンピックが開幕している)銀座7丁目に集合したらしいので、おそらく交旬(旬にはゴンベンがつきます)ビルの向かい側を清掃中の写真である。赤瀬川源平さん好きの私にとって銀座の重要なスポットなのだが、『アマンド』って元々六本木だったのね…。」

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五丁目「銀座千疋屋の袋」 2017 ¥100,000

「そのフルーツたちのきらびやかなたたずまいと価格に押され、なんだか「すみませんでした…。」と心の中でつぶやいてしまいそうにもなりますが、やはり売り手の品質への自信がみなぎっている感じがします。フルーツたちは「ここがちょっとね。」などとつまらぬ指摘を許さない工芸品の様に思いました。綺麗なバナナが一本ずつ購入できたので買ってみたのでした。」

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四丁目「ブーランジェリー木村家」 2017 ¥80,000

「知ってましたか?パン屋を「ブーランジェリー」と呼ぶみたいです。最近、近所のパン屋で知って、「ややこしい言い方が出てきて困るなあ。」なんて思っていましたが、何と木村屋の袋にも書かれているではありませんか。ちなみに銀座本店の看板は「家」と書かれています。勝海舟・西郷隆盛の江戸無血開城のための会談をお膳立てし、「幕末の三舟」と呼ばれる幕臣、山岡鉄舟によるものです。後に明治天皇の侍従になり、天皇のお花見でのお菓子を木村屋さんに求め、天皇が初めてあんパンを食すということになったようです。そんな歴史がこの街角にあるわけです。」

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四丁目「三越の包装紙」 2017 ¥50,000

「このデザイン、画家の猪熊弦一郎氏が描き、包装紙としてロゴを入れたのが、当時三越の宣伝部に勤務しアンパンマンの作者となる、やなせたかし氏だったそうです。包装紙・マチ付袋・手提げ袋はそれぞれ異なるデザインでしたが、最近リニューアルされ、マチ付袋もこのデザインになっています。ということで、中央に帯のある、DMに使用した作品がもう一度作れなかったのでした…。今回出品できておらず、申し訳ございません。」

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三丁目「松屋 銀座にて」 2017 ¥60,000

「勝手に「銀座らしい所」の一つと思っているのですが、お店は浅草にもあります。ロゴは、1978年からほぼ現行のものと知り、意外と時代を経ていることに驚きました。今回の作品、本をわざわざ包んでいるようにも見えますが、子ども用品売り場で『野菜クレヨン』を買ってラッピングしてもらった状態です。」

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一丁目「アンテナショップ」 2017 ¥30,000

「有楽町からこの辺りには全国各地のアンテナショップが多いようです。各地の雰囲気が楽しめます。たぶん、地元の人が「おー、これこれ。」と東京で見つけて嬉しくなる様なモノもあるのが、それぞれのセンスが光るところではないでしょうか。こちらは『おいしい山形プラザ』で見つけました。私には「ひとくち」と「くじら」そして「餅」のイメージがまるで噛み合わず、不思議過ぎて買ってしまいました。おやつに丁度よかったです。」

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四丁目の「ステップスギャラリー」で銀座の地図を楽しむのは、けっこう楽しいかもしれないよ。

槙野さんは16日(土)、18日(月)祝、23日(土)祝に在廊します。

事務所には旧作が並んでいます。

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わたしは山形出身なので、「ひとくちくじら餅」に愛着があります。昔は「くじら」ではなく「くぢら」と表記してあったはずです。懐かしい味です。

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2017年9月 7日 (木)

銀座シリーズ

来週は槙野央展ですが、月曜日ではなく水曜からのスタートになりますので、ご注意ください。

槙野央展

9月13日(水)-23日(土) 日曜休廊

12:00-19:00(土曜は17:00まで)

今回は「銀座シリーズ」という6点と旧作12点の計18点の展示になります。

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銀座シリーズの作品のタイトルだけご紹介しましょう。

①背景のアマンド

②銀座千疋屋の袋

③ブーランジェリー木村家

④三越の包装紙

⑤松屋 銀座にて

⑥アンテナショップ

どう?

面白そうでしょ。

お楽しみに!

ドイツのウテさんからメールで、展覧会のカタログのゲラが送られてきた。「小さい」カタログを作るということだったが、まあ、小さいといえば小さいが、50ページ以上のテキスト満載の立派なものである。

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今、印刷中とのこと。送られてきたらギャラリーに置いておきますので、見てくださいね。

ドクメンタのカタログもありますので、これも見てください。

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今、わたしはゾラの『居酒屋』を読んでいる。もうすぐ読み終わりそうなのであるが、読むのがとても苦しい。

主人公のジェルヴェーヌという女の一生なのだが、読み進めば進むほど苦しくなる。

あまりにも悲惨で目を覆いたくなるようなことばかりが起るのである。

ゴッホはゾラを愛読していたというので、がんばって読んでいる。話は面白いといえば、かなり面白いし、うまいといえばかなりうまい書き手なのであるが、貧乏のどん底、裏切り、放蕩、暴力、幼児虐待、アル中…が続くのでどきどきはらはらの連続でくたびれてしまうのである。

ゴッホはどんな気持ちでゾラを読んでいたのだろう。

主人公はジェルヴェーヌなのだが、作者は主人公に肩入れするわけでも同情を見せるわけでもなく、他の登場人物と同じように、淡々と描写して行くのである。

突き放して書いているので、ゾラは主人公に思い入れがないようにさえ思えるのだが、客観的に淡々と書いていくところがゾラの愛なのかも知れない。

人物描写が卓越で、特徴ある貧しい人たちが生きいきと描かれていて、どんどん読んでしまうのだ。

ジェルヴェーヌの娘のナナは成長して、「あばずれ」と化していくのであるが、その美貌ゆえに、さらにたいへんな人生をおくることになるのである。

『居酒屋』を読んだ人は、『ナナ』を読まずにはいられないはずである。

ゾラが描いているのは、「生活」である。生活が、われわれの人生そのものであるなら、人生とはいったい何なのであろうか。

それを描写していくことにはどんな意味があるのだろうか。いろいろなことを考えさせられる作品である。

☆展覧会案内

「清水晃 展」

9/13(水)-23(土) 日曜休廊

ギャラリー Kanon(銀座1-9-8 奥野ビル613)

「堀 タイチ 展」

9/16(土)-10/1(日) 水曜休

MERRY ART GALLERY 本館(横浜市中区諏訪町」16-1F)

「千崎千恵夫 展」

前期 9/21(木)-10/8(日) 立体

後期 10/12(木)-22(日)  写真

gallery 21yo‐j(世田谷区等々力6-24-11)

「線 幸子 展」

9/23(土)-10/17(火) 水曜休廊

1010美術(横浜市中区山下町214TAOビル3F)

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2017年9月 4日 (月)

金澤麻由子のパグ

なんだか恒例になってしまった感のある金澤麻由子の「パグ」であるが、今年も精力的に制作を続ける彼女は元気である。

今回は、毎日ギャラリーに詰めていますので、ぜひご覧いただきたいと思います。

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たいへん苦労して設置した映像もある。名前を呼ぶと吠えて答える。

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事務所にもたくさんの作品が並ぶ。

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新幹線で駆けつけたお客さんもいて、人気である。                         

「きみとぼくのあいだのコト」 紙に水彩 23×29cm ¥10,000 (売約済)

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「きみとぼくのあいだのコト 連作3枚」 紙に水彩 50×25cm ¥25,000

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「きみとぼくのあいだのコト 連作4枚」 紙に水彩 90×30cm ¥30,000

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今回はダンピングと呼んで差し支えない安さ。大サービスらしい。

来年はヨーロッパを回る展示も控えていて大忙しの金澤麻由子である。








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2017年9月 1日 (金)

ブレーメンの美術隊⑦ 最終回

8月15日(火)

ウテさんの「予定表」によると、今日はショッピングとフランスワインの試飲会である。

若者向けのゲストハウスである、われわれが泊まっているこの宿舎では、朝食が5.5ユーロで提供されている。わたしと倉重はこの朝食が楽しみだったが、他のみなさんは、どうせたいしたものは出ないのではないかと躊躇していたが、わたしが遅れて、エレベーターがないので、階段で4階から下の食堂に降りてみると、みんなすでに食べ始めていた。

コーヒー、ジュース、牛乳飲み放題。パン食べ放題。バター、ジャム使い放題。ハム、ソーセージ、果物、チーズ、これも自由にどうぞ。

なかなか良い朝食である。

わたしはアンパンのような形の大きなパンを食べたらお腹一杯になってしまった。わたしの隣に座った、ドイツ人らしい老婦人は、このパンを3個と、大量のハムやチーズを皿にいっぱい載せて平然と食べていた。

みんなはブレーメン市内にエイコさんとお土産を買いに出掛けたが、わたしはゲストハウスに残って休息をとることにする。疲れてしまっているのだ。

昼寝、煙草、読書、コーラ…

3時過ぎにみんなが戻ってくる。

さて、これからウテさんの家に行って、ワインの試飲会である。もちろんこれは夕食を兼ねている。

ブレーメンの駅から電車でオテルスブルグまで。15分ほど離れた郊外にウテさんの家はある。

駅でウテさんとアンドレアスが迎えに来てくれていて、車で移動。

ウテさんの家はとても広い。庭も広く、アトリエもたっぷりのスペースが取ってある。

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奥の壁の棒は、壁に直接取り付けられたイーゼルである。知り合いの金属加工をしている人に特注したそうである。

みんなは、庭でくつろいでいるが、わたしと倉重は、ウテさんのアトリエを物色しながら、羨ましい羨ましいと唱えながら歩き回った。

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左の梯子を昇るとパソコンとかコピー機とかが置いてある書斎である。倉重は本棚にアグネス・マーチンの画集を見つける。

「ウテさん、アグネス・マーチンが好きなの?」

と倉重か訊くと、その通りと答えるウテさん。

「やっぱりね」

と倉重とわたしは納得する。

俺はさ、*¥$&が好きなんだよな、とよく聞き取れないアメリカの作家の名前を挙げる。作家はさ、ものすごく好きな作家がいないとダメだよね、と言って

「吉岡は誰が好きなの?」

と不意に言うのでわたしは思わず

「ケネス・ノーランド」

とか正直に答えてしまった。

庭で試飲会が始まる。

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ウテさんの知り合いで、フランスワインを専門に輸入しているおじさんが自慢のフランスワインを次々に注いでくれる。

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一本一本、詳しい説明が述べられる。試飲会だからね。

アンドレアスが、ものすごく大きいソーセージを何本も何本も焼いてくれる。

いろんな種類が食べられて楽しい。白ソーセージも美味しかった。

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みんな食べ終わる頃になったときに、ポツポツと雨が降り出し、たちまち土砂降りになったので、みんなでテーブルや食器を持って、家の中に避難する。

コーヒーを飲みながらみんなでおしゃべり。小川君は疲れ果てて、ソファーで寝息をたてている。

これはウテさんの猫。「吾輩は猫である」とは言わなかった。

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そろそろ帰る時間である。ウテさんは一人に1本ずつフランスワインを持たせてくれた。

今回の展覧会は本当にウテさんがいろいろと準備してくれて、気を遣ってくれた。われわれが帰ったら寝込むのではないだろうか。

雨が止んだので、またオテルスブルグ駅までみんなで移動。

駅で電車を待つ。今日で、ウテさんとはお別れである。

電車がホームに入ってくるときに、また雨がザーッと降り出す。

電車からみんなで手を振る。雨が顔にもかかっていたので、ウテさんが泣いているかどうかはわからなかった。

電車でブレーメンまで戻り、一度宿舎に戻ると、みんなは再び夜のショッピングに出掛けた。

8月16日(水)

タクシーでブレーメン空港へ。

8:00到着。空港で朝食。

これでブレーメンの美術隊は解散である。

今回はオランダ航空ではなく、エールフランスで。ドゴール空港でトランジット。

CAさんにお茶をもらって、ダンケ、と言ったら、メルシーと返された。そうか、もうドイツではないのだ。

エールフランスのCAさんは若い女性が多く、ミランダ・カーがワインを注いで回っていた。

またしてもわたしは何度もトイレに行き、ときどき窓の外の風景を眺めた。

印象深い不思議な雲が見えた。

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(おしまい)

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2017年8月29日 (火)

ブレーメンの美術隊⑥

8月14日(月)

ドクメンタを見に行く。

朝7:15、ブレーメンから電車でカッセルへ。総勢9名。

電車の不具合か何かで、途中で乗り換えとか面倒なことになるが、なんとかカッセルに到着。駅舎の床などに、一面にドクメンタの宣伝が書いてあって、力の入れようがわかる。

駅でサンドイッチの朝食を食べてから、さらに電車でドクメンタ会場の中心まで移動する。

ドクメンタの会場は中心の会場だけでなく市内に拡がっていて、電車で移動なんてこともあるのだが、われわれは時間がないので、中心部だけを見ることにする。

全部見るには3日ぐらいかかるはずである。

9名で動くと、いろいろとたいへんなので、3つのグループに分かれて行動することになる。昼食もそれぞれ。各グループにドイツ語のわかる人が一人入るようにする。

ウテさんの組は倉重、勝又。エイコさんのグループは小林さんと中村さん。わたしは、小川夫妻とで回ることになる。

わたしはただただ、小川夫妻についていくことにして、どこを見るかも任せることにする。

会場のど真ん中にあるのは、これ。

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パルテノン神殿である。今回はギリシャとの共同開催ということもあって、こんな作品がいきなりあって、度肝を抜かれる。

鉄骨で作ってあり、表面にはサランラップみたいのが巻いてあって、その下には本が挟まっている。

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いったい何十万冊あるのだろうか。ただただ呆然としてしまう。この夥しい本は、すべて、今までに発禁になった本だそうである。

思わず、この作品にかかった費用を考えてしまう。何億なんてもんじゃないような気がする。

広大な公園を歩きながら屋外の作品を見て回る。

こんな彫刻作品も広い会場ではそれほど大きく感じられない。

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とにかく歩き回って、ワカコさんの万歩計では8000歩に達していた。

疲れたのでアイスクリーム。まあ、観光地にありがちなネーミングの「ドクメンタアイス」を食べる。

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味?

ちょっと濃い目だね。

3人でランチ。小川くんはケバブが食べたくてお店を捜したがみつからないのであきらめて普通のカフェで食べる。

話をしていたら、思いがけない発見をしてしまった。小川君は、日本で仕事を探していて、福祉に興味があるということで、学校に通って免許を取った。そして今年、「福祉関係の施設」に就職したと聞いていたので、それはどこ?と問うと、江戸川区にある障碍者の施設です、というので、そこの名前はなんていうの?とさらに訊くと、「虹の家」とのこと。え?虹の家なんだ!

虹の家は江戸川区立の生活実習所で、わたしが白鷺養護学校の教員だったときに、何度も何度も会議や実習で通ったところである。なあんだ、そうだったのかあ。しばらく虹の家の話題で盛り上がる。

午後は屋内の展示を見て回る。

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広くて、訪れる人もものすごく多くて、わたしが若い頃から憧れていたドクメンタってこうだったのね、と感慨深かった。

圧倒されるスケールにとにかくびっくりしたことはしたのだが、一つひとつの作品は、衝撃的な作品はなかったような気がする。

ま、60を過ぎてドクメンタに驚いているようではしょうがないのかも知れないのだが、わたしは密かに「勝てる」と思ってしまった。

今回の展示に、日本人の作家は一人も選ばれていない。

どうなのよ。

ドクメンタに一人も選ばれていない国で、われわれは美術をやっているわけなのである。その辺を改めて考えなければならないような気がする。

でも、ここの作品群を見て、わたしが思ったことは、なんか、みんな自分が自分がという意識が強すぎてちょっと胸焼けがする。作品の持つ力っていうのはこういうことではないような気もするのだ。

さっき見たパルテノンの作品は圧倒的なのだが、ゴッホの小さな素描一枚に敵わないのではないかと思った。

出来の良い作品は、いきなりわれわれの心を鷲づかみにするものなのだ。心に響かないとだめなんじゃないかな。それは虚心坦懐というか、私を消し去ったところに存在するものなのではないか、と考えたのだった。

あざとい作品はダメだよね。

己を忘れる境地について、『吾輩は猫である』の独仙氏はこんなことを言っている。

「…昔しの人は己れを忘れろと教えたものだ。今の人は己れを忘れるなと教えるからまるで違う。二六時中己れと云う意識を以て充満している。それだから二六時中太平の時はない。いつでも焦熱地獄だ。天下に何が薬だと云って己れを忘れるより薬な事はない。」

夕方、また9人が会場の入り口で落ち合う。わたしはカタログを1冊購入。

17:36発の電車でブレーメンに戻るはずだったが、線路に土砂崩れがあって、電車がキャンセルされていた。次の電車まで90分あるので、みんな駅のカフェで思い思いのものを中途半端に食べる。今夜はみんなでウテさんに夕ご飯をご馳走することになっていたのだが、電車とともにキャンセル。

19:02発の電車に乗り込むが、混んでいて座れない。2時間くらいだから立っていても平気なのだが、途中で、インドネシア人のおじさんが、ここ空いてるから座りなよと言ってくれる。

ブレーメンから電車に乗ってゲストハウスに戻る。

疲れて、そのまま寝てしまう。

(つづく)


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ブレーメンの美術隊⑤

8月13日(日)

展覧会初日、そしてアーティストクッキング。

わたしのイメージとしては、縁日の屋台みたいのを作って、たこ焼きとか焼きそばとかを、「へい、いらっしゃい!」などと声をかけて売るのかなあ、というものだったのだが、話を聞くと、そんなものではなく、本格的な日本食を出す、ということなのだった。

メニューは、天ぷらとお寿司をメインに日本酒も出す。

お寿司を担当するのは小川さとし君。彼は、日本でもドイツでもお寿司屋さんでバイトしていたことがあるので、握りも巻物もお手の物なのである。ウテさんは、鮨といえばマグロでしょと主張したが、小川君は、ドイツのマグロはお鮨に向かないということで却下。

天ぷらを担当するのは勝又さん。

チエコさんは抹茶を使ったデザート、小林さんが味噌汁である。

みんな協力して仕込みに入っている。

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役に立たない吉岡と倉重は、ふらふらして煙草をふかしているだけである。

アーティストクッキングの参加者は、アーティストを含めて20数人ということだった。

ネットで申し込むらしい。参加費も4000円だか5000円だかである。

午後1:30から地下のレストランで会食スタート。

フランクが料理の説明をして、みんなにお酒を注いでまわり、ホストとして振舞っていた。

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最初に前菜と梅酒。お浸しとごぼうの金平、イカの炒め煮。おお、本格的である。

日本酒が注がれ、ワインもある。

おすしは、握りと巻物の両方あり、日本のお寿司屋さんと較べても遜色はない。すごい。海老が新鮮で美味しい。

天ぷらも海老を中心に、料亭の味である。

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メインのテーブルがいっぱいだったのでわたしと倉重、小林は、隅のテーブルに座ったのだが、同じくわたしたちのテーブルにご夫人が一人席に着いた。

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ポーランド出身という人で、これが箸ね、と言いながら、おそるおそる食べていた。

英語ができなくて…と申し訳なさそうにしていたが、われわれの英語も心もとないので同じである。なかなか言いたいことが伝わらなくて、双方とも難渋していたのだが、誰かが、通訳しましょうか?と買って出てくれたのだが、このご婦人は

「通訳はいりません」

と断る。通訳を入れると言葉は通じるが、心が通じなくなるということらしい。

われわれは、言葉以外のものでコミュニケーションをとる。

倉重の笑顔なんてそれだけでたくさんのことを伝えることができるのである。

アーティストクッキングが終わって、われわれは、アガーテンブルグからブレーメンに移動である。

わたしはアンドレアスさんが運転する車に乗る。こっちのハイウェイはスピード制限がないので、160キロくらいで飛ばす。

前回とは別のゲストハウスに泊まることになる。若者やバックパッカーが利用するような、狭い造り。とにかく安いところを、とウテさんに頼んでいたのでしょうがないかな。

二人部屋で2段ベッド。わたしは下で小林さんが上。一人90ユーロと言われていた。1万円ちょっと。まあ、そんなものか、と思っていたら、3泊で90ユーロだった。

夕食は市街のイタリアンレストランで。

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ピザが美味しかった。全部は食べ切れなかったけど。

ゲストハウスに着くと、どっと疲れて、そのまま寝てしまった。

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2017年8月28日 (月)

纐纈令はもの派なのか

今日から纐纈 令(コウケツ リョウ)展。

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土曜日に搬入をやり、終わってから中華「ヤンヤン」でビールを飲みながら令くんとだらだらおしゃべりをする。彼はITの会社に就職したばかりで、休みも取れないので、今回の個展には土曜日しか在廊できない。

若手作家はやっぱりどんどん消えていくねえ…という話をする。纐纈君のようにいつも疲れていてやる気ががなかなかでないでだらだらしている人は、意外と長続きするのである。

「だって俺ほかにやることないし…」

こんなやつがいつか飛躍する。

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餃子を食べて、空芯菜をつまみながら、彼は突然

「吉岡さんて、もの派ですよね?」

と鋭いことを言う。

「え?そう思う?」

「わかりますよ。テープだってモノだし、バーの作品も、あれ、モノですよね?」

そこまでわかっているやつはなかなかいない。驚いた。

「ぼくももの派ですよ」

と、さらに驚くことをつぶやいた。

「え、そうなの?あのコンセントはそうなんだ」

「コンセントと壁紙というモノですよ」

その後、大盛りの五目冷やしそばをふたりでやっつけながら、アルテポーヴェラについてとか、いろんなことを話して夜が更けていったのだった。

「コンセント④」 木・コンセント・紙・アクリル 18×14cm 2017 ¥18,000

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「flower③」 2017 ¥12,000

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「コンセント⑧」 2017 ¥15,000

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「HERO」 2016 ¥10,000

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「METAL②」 2017 ¥20,000

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もの派としてのコンセントは、そういわれてみると、味わい深い。

☆展覧会

「浜田 浄 展」

9/4(月)-16(土)

ギャラリー 川船(京橋3-3-4 フジビルB1F)

「達 和子 展」 

9/4(月)-14(木)

ギャルリー志門(銀座6-13-7新保ビル3F)

「寛容な線たち」

宇野和幸・倉掛春菜・清水紗希・友寄万梨奈

9/15(金)-27(水)

ギャラリー睦(千葉市中央区弁天3-8-11)

☆本

『吾輩は猫である』のあとはこの3冊を買ってみた。

ゾラ 『居酒屋』(新潮文庫)

アナトール・フランス 『シルヴェストル・ボナールの罪』(岩波文庫)

宇野浩二 『苦の世界』(岩波文庫)

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『吾輩は猫である』の猫は最後は甕のなかに落ちて、溺れて死んでしまうんだよね…

漱石の凄さを感じてしまった。

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